2024年に施行された「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」、通称「フリーランス新法」はご存じでしょうか。
フリーランスとして働く人々の権利を保護し、取引の透明性を確保するために制定されました。
本法律は特定受託事業者と取引する企業に対し、契約の明確化や報酬支払いの適正化を義務付けています。
この記事では、企業が特に注意すべき法律のポイントと具体的な対応策を解説します。法務・人事担当者の方は、ぜひご参考ください。
フリーランス新法の目的と適用対象
フリーランスの労働環境は、これまで法的保護が不十分であると指摘されてきました。
従業員として雇用されている場合に比べ、契約内容の不透明さや取引先からの一方的な条件変更が課題として挙げられていました。
フリーランス新法は、こうした課題を解消し、フリーランスが安心して働ける環境を整備することを目的としています。
フリーランス新法の対象となるのは特定委託事業者(特定受託事業者に業務を発注する者)が特定受託事業者(フリーランス)に業務委託した場合になります。
特定受託事業者とは業務委託の相手方となる事業者であって、従業員を雇用していない者が対象になります。
一人で働いている個人事業主だけでなく、従業員を雇っていない法人も対象になりますので、ご注意ください。
フリーランス新法の主な内容
フリーランスとは、特定の企業や組織に所属せず、個人で業務を請け負う働き方を指します。
今後、フリーランスとの関わり方が増えてくるのが間違いないので、フリーランス新法の内容を理解しておくことは大事なんです。
業務内容の明示の義務化
交付義務は、フリーランス新法の適用対象である「特定受託事業者」と取引を行う際に求められます。
取引を行う際、契約内容を明記した書面(または電子データ)を提供する義務があります。
記載すべき主な内容は以下の通りです
報酬額および支払い条件
契約期間
解約条件
この義務化により、曖昧な口約束や不透明な契約が減少し、トラブル防止が期待されています。
報酬の支払い期限の設定
報酬は、契約に基づき適切な期限内に支払う必要があります。
支払い遅延が発生した場合、法的な制裁が科される可能性があります。
一方的な契約変更の禁止
フリーランスとの契約内容を一方的に変更することはできません。
契約変更を行う場合は、フリーランスとの合意が必要です。
ハラスメント防止義務
取引過程において「特定受託事業者」に対するパワーハラスメントやセクシュアルハラスメントが発生しないよう、企業には防止策が求められます。
例えば、取引に関する相談窓口を設置することや、適切な言動を徹底するためのガイドラインを設けることが効果的です。
法務・人事担当者が取り組むべきポイント
1. 契約書の見直しと標準化
既存の契約書が新法に適合しているか確認しましょう。不足している項目があれば、追記や修正が必要です。標準的な契約書テンプレートを作成しておくと、迅速な対応が可能です。
2. 支払いプロセスの整備
報酬の支払い遅延がないよう、社内の経理プロセスを見直してください。特に、フリーランスへの支払い期限を守るためのスケジュール管理が重要です。
3. 従業員教育の実施
法務や人事部門だけでなく、フリーランスと直接関わる現場社員に対しても、新法の内容を周知する必要があります。
特にハラスメント防止のための研修を行うと効果的です。
妊娠・出産・育児・介護など家庭の事情を考慮して発注を行うなどの考慮も必要です。
4. トラブル対応の窓口設置
フリーランスからの苦情や相談を受け付ける窓口を設置することで、問題の早期解決が図れます。また、窓口の設置は企業の信頼性向上にもつながります。
フリーランス新法への対応が企業にもたらすメリット
フリーランス新法に適切に対応することは、法的リスクの低減だけでなく、以下のようなメリットをもたらします:
トラブル防止による取引の効率化
企業イメージの向上
これにより、企業とフリーランスの関係性が良好になり、長期的なパートナーシップを築ける可能性が高まります。
まとめ
「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」は、フリーランスと企業間の取引を適正化し、透明性を高めることを目的としています。
法務・人事担当者は、新法への対応を迅速に進めることで、法的リスクを回避しつつ、フリーランスとの良好な関係を築くことができます。
具体的な対応策として、契約書の見直し、支払いプロセスの整備、社員教育の徹底が挙げられます。
この機会に自社の取引体制を見直し、フリーランスとの信頼関係を強化しましょう。
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